契約トラブルの実例と防ぎ方|決めていないことが後で問題になる
制作会社が悪いから起きるとは限りません。決めていなかったことが原因です。
ホームページ制作でのトラブルは、 制作会社が悪いから起きるとは限りません。
多くは決めていなかったことが後で問題になる形で発生します。 ここでは実際に起きやすい場面と、 契約段階で防ぐ方法を整理します。
よくあるトラブル
| 場面 | 争点 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 「イメージと違う」 | 無償修正か追加費用か | 修正回数と、修正と仕様変更の線引きを明記 |
| 公開が大幅に遅れた | どちらの責任か | 工程表に発注側の作業と期限も書く |
| データを渡してもらえない | 著作権の帰属 | 検収時に発注者へ譲渡と明記 |
| 追加費用を請求された | 当初の範囲に含まれるか | 見積もりの内訳を「一式」にしない |
| 途中で担当者が変わった | 引き継ぎの不備 | 体制と、変更時の連絡を契約に入れる |
| 公開後に不具合が出た | 無償対応の範囲と期間 | 契約不適合責任の期間を確認 |
| 途中で中断した | 既払い分の精算 | 中断時の精算方法を明記 |
1つめが最も多く、最ももめます。 発注側は「まだ完成していない」と考え、 制作側は「仕様変更なので追加費用」と考える。 どちらも自分の理解では正しいため、話が平行線になります。
契約書で必ず確認する7項目
- 成果物の範囲(ページ数、機能、納品するデータの形式)
- 著作権の帰属(検収完了時に発注者へ譲渡されるか)
- 修正の回数と範囲(何が無償で、何が有償か)
- 検収の基準と期間(何をもって完了とするか、何日以内に判断するか)
- 公開後の不具合対応(期間と範囲)
- 中断・解約時の精算(着手金の扱い、出来高の計算方法)
- 再委託の可否(再委託先の作業にも元請けが責任を負うか)
2つめの著作権は、後から取り戻せません。 特約が無ければ、著作権は制作した側に残ります。 「本件成果物の著作権(著作権法第27条・第28条の権利を含む)は 検収完了時に発注者へ譲渡する」といった条項を入れてください。
なお、制作会社が第三者から購入した素材 (写真・有料テーマ・有料プラグイン)は、 ライセンスが制作会社に紐づいていることがあります。 何を使っているかの一覧をもらってください。
検収の基準を決めておく
「完成」の定義が曖昧だと、支払いのタイミングで対立します。 次のような形で、判断できる基準にしておきます。
- 合意したサイト構成のページがすべて公開されていること
- 指定した主要ブラウザとスマートフォンで表示が崩れないこと
- 問い合わせフォームが指定の宛先に届くこと
- 指定した箇所を管理画面から更新できること
- 納品物(データ・マニュアル)が引き渡されていること
「デザインが気に入ること」は基準になりません。 主観的な条件を検収要件にすると、 制作側はいつまでも完了できず、契約として成立しません。 デザインの合意は、実装前の段階で「確定」として区切ってください。
合意はメールで残す
進行中の口頭での合意は、後から証明できません。 打ち合わせのたびに、決まったことをメールで送るだけで 大半のトラブルは防げます。
| 残すべき内容 | 理由 |
|---|---|
| デザイン確定の合意 | 後戻りが有償になる分岐点 |
| 仕様の追加・変更と、その費用 | 請求時に争点になる |
| 公開日の変更と、その理由 | 遅延の責任の所在 |
| 「この範囲は今回やらない」という合意 | 後で「入っていると思った」を防ぐ |
形式は簡単で構いません。 「本日の打ち合わせで、以下を確定しました。相違があればご指摘ください」 という数行のメールで十分です。 相手が異議を述べなかった記録が残ります。
遅延の責任を分ける
公開が遅れたとき、 どちらの作業で止まったのかが分からないと責任を問えません。
対策は、工程表に発注側の作業と期限も書き込むことです。
- 原稿の提出期限
- デザイン確認の回答期限
- 撮影日
- 各段階の承認期限
制作会社の作業だけが並んだ工程表は、実態を表していません。 発注側の作業が書かれていれば、 どちらが遅れたのかが記録として残ります。 これは制作会社を追及するためではなく、 お互いに進行を管理できるようにするためです。
もめてしまった場合
- 感情的なやり取りを止める(メールでの応酬は状況を悪くする)
- 契約書と、これまでのメールを時系列で整理する
- 争点を絞る(すべてを主張すると解決しない)
- 相手の担当者より上位の窓口に相談する
- 金額が大きい場合は専門家に相談する
3つめが重要です。 不満をすべて並べると、相手も全面的に防御に回ります。 「これだけは解決したい」という点を1〜2つに絞るほうが、 現実的な着地が見つかります。
なお、制作会社を変えることが最善とは限りません。 途中で切り替えると、それまでの費用が回収できず、 引き継ぎにも別途費用がかかります。 まず現在の契約の枠内で解決できないかを検討してください。
※ 本記事は一般的な整理です。 個別の契約や紛争の対応については、専門家にご相談ください。
よくある質問
契約書を交わさずに進めても大丈夫ですか?
避けてください。注文書と請書だけでも法的には契約が成立しますが、著作権の帰属、検収の基準、修正の範囲、中断した場合の精算といった<strong>もめる部分がすべて未定のまま</strong>になります。書面が無いと、後で言った言わないになります。
着手金を払った後で解約したい場合はどうなりますか?
契約内容によります。一般には、それまでに実施した作業分が精算対象になります。着手金が全額返らないことも多いため、<strong>中断時の精算方法を契約前に確認</strong>してください。「着手金は返金しない」という条項の有無は必ず見るべきです。
納品されたものが提案と違います。
まず提案書と契約書に何が書かれているかを確認してください。書面に無い口頭の約束は、証明が難しくなります。メールで確認していれば記録として使えます。進行中の重要な合意は、<strong>必ずメールで文面に残す</strong>習慣を付けてください。
検収したくない場合、支払いを止められますか?
契約で定めた要件を満たしていないなら、検収を留保して修正を求めることはできます。ただし「なんとなく気に入らない」は理由になりません。<strong>何がどう契約と違うのか</strong>を具体的に示す必要があります。だからこそ検収の基準を契約時に決めておくべきです。
掲載している金額は、一般的な発注で見かける水準をもとにした目安です。 実際の費用は要件・地域・体制によって変わります。必ず複数社から見積もりを取り、 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比べたうえでご判断ください。