就業規則の作り方|10人未満でも作る意味
10人未満なら義務はありません。それでも作る価値があります。
就業規則は、トラブルが起きたときに会社を守る文書です。 ただし 作っただけでは効力を持ちません。 意見聴取・届出・周知の3つが揃ってはじめて機能します。
作成の手順
| 順番 | やること | 注意点 |
|---|---|---|
| 1 | 現状を整理する | 労働時間、休日、賃金、休職の実態を洗い出す |
| 2 | 条文を作る | 実態と違うことを書かない。守れない規定は入れない |
| 3 | 従業員代表の意見を聴く | 過半数代表者を民主的な方法で選ぶ(会社が指名しない) |
| 4 | 労基署へ届け出る | 10人以上の事業場は義務。意見書を添付する |
| 5 | 従業員へ周知する | 掲示、書面交付、社内システムのいずれか |
会社が一方的に指名した人の意見書は、 適法な手続きとみなされないことがあります。 投票、挙手、話し合いなど、労働者の過半数がその人を支持していると分かる方法で 選んでください。 管理監督者は代表になれません。 36協定でも同じ要件なので、あわせて確認しておくとよいです。
必ず書く事項(絶対的必要記載事項)
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替勤務がある場合はその方法
- 賃金の決定・計算・支払の方法、締切と支払の時期、昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
制度があるなら書く事項(相対的必要記載事項)
- 退職手当(適用範囲、計算方法、支払方法・時期)
- 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額
- 食費、作業用品などの負担
- 安全衛生
- 職業訓練
- 災害補償、業務外の傷病扶助
- 表彰と制裁(懲戒) ← 定めがないと懲戒処分ができない
ひな形をもとに作るときに起きがちなのが、
自社にない制度が条文に残ることです。
・「賞与は年2回支給する」→ 業績が悪い年も支払い義務が生じる
・「退職金を支給する」→ 制度がないのに請求される
・「休職期間は3年」→ 復職しない社員を長期間抱える
書いてあることは守る義務があります。
実態に合わせて削るのも、作成作業の一部です。
変更するとき
| 変更の種類 | 必要な手続き |
|---|---|
| 労働者に有利な変更 | 意見聴取 → 届出 → 周知 |
| 労働者に不利な変更 | 原則として個別の同意が必要。合理性がなければ無効とされる |
| 法改正への対応 | 意見聴取 → 届出 → 周知(実務上は速やかに) |
賃金の引下げ、手当の廃止、休職期間の短縮などは不利益変更にあたります。 同意なく進めると、後から無効を主張されることがあります。
作った後にやること
- 周知の記録を残す:いつ、どの方法で知らせたか
- 入社時に説明する:雇用契約書と併せて渡す
- 年1回は見直す:法改正が頻繁にある分野(育児介護、ハラスメント、労働時間)
- 運用と一致させる:規則にない運用を続けると、規則のほうが形骸化する
よくある質問
従業員が何人から届出が必要ですか?
<strong>常時10人以上</strong>の労働者を使用する事業場です。パート・アルバイトも人数に含みます。「事業場ごと」に数えるので、本社8人・支店5人なら支店だけ届出が不要ということはなく、各事業場で10人以上かどうかを見ます。
10人未満でも作る意味はありますか?
あります。<strong>懲戒処分は就業規則に定めがないとできません</strong>。休職制度も、規定がなければ「休ませる根拠」がありません。助成金の要件になることも多く、10人に達する前に整えておくほうが後が楽です。
従業員の同意は必要ですか?
作成・変更の際は<strong>意見を聴く</strong>ことが必要ですが、同意までは求められていません(意見書に反対と書かれていても届出は可能)。ただし<strong>労働条件を不利に変更する場合</strong>は、原則として個別の同意が必要です。
周知はどうすればよいですか?
「常時各作業場の見やすい場所への掲示」「書面の交付」「社内システムでの閲覧」のいずれかです。<strong>周知していないと効力を争われます</strong>。金庫にしまっておくのは周知にあたりません。
まとめ
- 常時10人以上の事業場は届出が義務。10人未満でも懲戒や休職のために作る価値がある。
- 過半数代表者は民主的な方法で選ぶ。会社の指名は無効になりうる。
- ひな形の条文をそのまま残すと、自社にない制度を約束することになる。
- 作成後の周知まで行って、はじめて効力を持つ。
作成を依頼する場合の費用は 就業規則の作成費用 にまとめています。
掲載している金額は、一般的な発注で見かける水準をもとにした目安です。 実際の費用は要件・地域・体制によって変わります。必ず複数社から見積もりを取り、 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比べたうえでご判断ください。