制作会社を変えるときの引き継ぎ|ドメイン・データの所有権
揉めるのはデータではなく、ドメインとアカウントの管理権限です。
制作会社を変える、あるいは社内で管理を引き取る。 このときに問題になるのは技術ではなく、権限と所有権です。
ホームページは「サイトのデータ」だけでは動きません。 ドメイン、サーバー、SSL、外部サービスのアカウントが揃って初めて成立します。 このうち1つでも押さえていないと、移行できません。
引き継ぎで必要になるもの
| 対象 | 必要なもの | 無いとどうなるか |
|---|---|---|
| ドメイン | レジストラの管理画面のID/認証コード | 移管できない・更新できない |
| サーバー | コントロールパネルとFTP/SSHの情報 | データを取り出せない |
| サイトのデータ | ファイル一式とデータベース | 作り直しになる |
| CMS | 管理者権限のアカウント | 更新できない |
| SSL証明書 | 発行元と更新方法 | 期限切れで警告が出る |
| アクセス解析 | 管理権限(オーナー権限) | 過去データを失う |
| デザインデータ | 元データ(Figma・Photoshop等) | 体裁を揃えた追加ができない |
アクセス解析の権限は見落とされがちです。 制作会社のアカウント配下に作られていると、 関係が切れた時点で数年分の履歴を丸ごと失います。 アクセス解析は必ず自社アカウントで作成し、制作会社には権限を付与する形にしてください。
ドメインの名義は最優先で確認する
ドメインは会社の資産です。 メールアドレスにも使われているため、失うとサイトだけでなく業務が止まります。
- 登録者名義が自社になっているか(Whois情報で確認できる)
- 管理画面にログインできるか(IDとパスワードを自社で保持しているか)
- 連絡先メールアドレスが有効か(更新通知が届かないと失効する)
- 支払い方法が個人のカードになっていないか(退職・失効で更新が止まる)
「Whois代行」が設定されていても、名義は確認できます。 レジストラの管理画面にログインすれば登録者情報が見られます。 ログインできない時点で、実質的に自社の管理下にありません。
著作権の帰属は契約書で決まる
「うちが金を払ったのだから、データは当然もらえる」とは限りません。 納品物の著作権は、特約が無ければ制作した側に残ります。
| 契約の書き方 | 引き継ぎ時にどうなるか |
|---|---|
| 著作権は発注者に譲渡する | データの引き渡しを求められる |
| 記載なし | 制作会社に残る。渡す義務は無い |
| 使用許諾のみ | そのまま使えるが改変に制限が付くことがある |
実務上は、揉めずに引き渡してくれる会社が大半です。 ただし関係が悪化してからでは交渉になりません。 次に発注するときは、契約書に 「本件成果物の著作権(著作権法第27条・第28条の権利を含む)は検収完了時に発注者へ譲渡する」 といった条項を入れておいてください。
なお、制作会社が第三者から購入した素材(写真・イラスト・有料テーマ・有料プラグイン)は ライセンスが制作会社に紐づいていることがあります。 この場合、引き継ぎ後に使い続けるにはライセンスの再購入が必要です。 何を使っているかは一覧でもらってください。
円満に引き継ぐ進め方
- 先に契約書と請求書を読み返す(著作権・保守の解約予告期間を確認する)
- 解約の意思を伝える前に、必要なものの一覧を作る
- 解約と同時に引き継ぎ資料を依頼する(有償でも受けてもらえることが多い)
- 受け取ったデータで実際に動くか確認してから、契約を終了する
- すべてのパスワードを変更する
順番が重要です。 解約を伝えてからデータを求めると、対応の優先度が下がります。 逆に受け取り確認の前に契約を終わらせると、不足があっても頼めなくなります。
引き継ぎ作業は制作会社にとって収益にならない仕事です。 無償で求めるより、作業費として依頼したほうが結果的に早く、確実に揃います。
次の会社に渡すもの
新しい制作会社が見積もりを出すには、現状が分からないと判断できません。 次の情報が揃っていると、調査費が減り、見積もりの精度も上がります。
- サーバーの種類とプラン(PHPのバージョン、容量)
- CMSの種類とバージョン、使用中のプラグイン一覧
- 有料テーマ・有料プラグインとそのライセンス状況
- 外部サービスとの連携(フォーム、予約、決済、MAツールなど)
- 過去の改修履歴(分かる範囲で)
「よく分からないので調べてほしい」でも問題ありません。 ただし調査に工数がかかることは前提にしてください。 現状不明の状態から始める場合、初期に10〜30万円程度の調査費が発生することがあります。
よくある質問
ドメインは制作会社のものになっていることがありますか?
あります。制作会社が自社名義で取得し、そのまま管理しているケースは珍しくありません。名義が制作会社だと、移管に相手の協力が必要になります。登録者情報(Whois)を確認し、自社名義でなければ関係が良好なうちに移管しておいてください。
制作したデータをもらえないと言われました。
契約次第です。著作権の帰属が制作会社のままなら、相手に渡す義務がないことがあります。ただしサーバー上で稼働しているファイルは通常取得できます。揉める前に契約書の著作権条項を確認してください。次の発注では「納品物の著作権は発注者に譲渡」と明記しておくべきです。
引き継ぎを断られた場合、作り直すしかないですか?
多くの場合は作り直さずに済みます。サーバーにログインできれば、ファイルとデータベースは取得できます。問題はドメインの管理権限で、これだけは相手の協力かレジストラへの手続きが必要になります。
引き継ぎ時に一番よく起きるトラブルは何ですか?
「サーバーとドメインのログイン情報が誰も分からない」です。担当者が退職し、制作会社とも連絡がつかず、更新もできず移転もできない状態になります。この状態はドメインの有効期限が切れた時点で表面化します。
掲載している金額は、一般的な発注で見かける水準をもとにした目安です。 実際の費用は要件・地域・体制によって変わります。必ず複数社から見積もりを取り、 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比べたうえでご判断ください。