CMS移行・サーバー移転の実務|止めずに移す手順
CMSの変更は「移転」ではなく「作り直し」です。費用の前提が変わります。
サーバーを変える、CMSを変える、制作会社を変える。 いずれの場合もサイトを別の場所へ移す作業が発生します。
作業自体は定型的ですが、 抜けやすい工程がいくつかあり、そこを飛ばすと事故になります。
移転が必要になる場面
| きっかけ | 移すもの | 難易度 |
|---|---|---|
| サーバーの契約変更・値上げ | ファイルとデータベース | 低 |
| PHPのバージョン対応 | 同上(+動作確認が必要) | 中 |
| 制作会社の変更 | ファイル・DB・ドメイン・各種アカウント | 中 |
| CMSの変更 | データのみ。見た目と機能は作り直し | 高 |
| サーバー会社のサービス終了 | 期限があるため計画的に | 中 |
CMSの変更は「移転」ではなく「作り直し」です。 記事データは移せても、 デザイン・レイアウト・独自機能はすべて新しく作ることになります。 費用を見積もる際は、新規制作と同等と考えてください。
移転の手順
- 移転先の環境を確認する(PHPのバージョン、データベースの種類、容量)
- 現行サイトのバックアップを取る(ファイルとデータベースの両方)
- 移転先に複製を作り、仮のURLで動作確認する
- 検索エンジンに仮サイトを拾わせない設定にする
- 問題が無ければ、現行サイトの更新を止める
- 最新のデータで再度複製する
- ドメインの向き先を切り替える
- 切り替え後に全ページと機能を確認する
- メールの送受信を確認する
- 旧サーバーは1か月程度残しておく
4つめを飛ばすと事故になります。 動作確認用の仮URLが検索エンジンに登録されると、 本番と同じ内容のページが2つ存在することになり、評価が分散します。 仮環境には必ずアクセス制限をかけるか、 検索エンジンに登録しない設定を入れてください。
9つめも忘れられがちです。 ドメインを移すとメールの設定も影響を受けます。 サイトの表示だけ確認して完了とすると、 数日後に「メールが届いていない」と発覚します。 送信と受信の両方を、実際に試してください。
切り替え時に起きること
ドメインの向き先を変更すると、 世界中に反映されるまで数時間から48時間かかります。 この間、見る人によって新旧どちらのサーバーが表示されるか分かれます。
| 注意点 | 対策 |
|---|---|
| 切り替え中に更新すると片方にしか反映されない | 切り替え前に更新を止める |
| 問い合わせが旧サーバーに届く | 旧サーバーからも同じ宛先に届く設定にしておく |
| 切り替え中の注文・申し込みが分散する | ECは特に注意。閑散時間帯に実施する |
フォームの送信先は、旧サーバー側も生かしておいてください。 切り替え途中で旧サーバーを見ている人が問い合わせを送った場合、 旧側の設定が消えていると問い合わせが失われます。
実施する時間帯
- アクセスの少ない時間帯に行う(多くの企業サイトは深夜〜早朝)
- 金曜の夕方は避ける(問題が起きたとき週明けまで動けない)
- 連休前は避ける
- 繁忙期・キャンペーン期間は避ける
「金曜の夕方に切り替える」は最も避けるべき選択です。 週末に問題が発覚しても、制作会社もサーバー会社も対応が遅くなります。 火曜か水曜の早朝が、対応の余裕を取りやすい時間帯です。
移転後に確認すること
| 確認項目 | 放置した場合 |
|---|---|
| 全ページが表示されるか | 一部ページの消失に気づかない |
| 問い合わせフォームが届くか | 問い合わせが消える |
| SSLが有効か | 警告が表示される |
| メールの送受信 | 業務に直接影響する |
| アクセス解析が動いているか | データが途切れる |
| 管理画面にログインできるか | 更新できなくなる |
| 画像が全て表示されるか | パスの変更でリンク切れになることがある |
| 定期実行の処理 | 自動投稿・自動バックアップが止まる |
最後の「定期実行の処理」は最も見落とされます。 自動バックアップ、定期的なデータ取り込み、メール配信などが サーバー側の仕組みで動いている場合、 移転先で設定し直さないと静かに止まります。 止まっても画面上は何も変わらないため、数か月気づかないことがあります。
URLを変える場合
移転と同時にURL構造を変える場合は、 旧URLから新URLへの転送設定が必須です。
- 旧サイトの全URLを一覧にする
- それぞれ新サイトのどのページに対応するか決める
- 1対1で転送する設定を入れる
- 切り替え後に旧URLを実際に開いて確認する
- Search Console でエラーの発生を監視する
「対応するページが無いものは全部トップへ」は避けてください。 検索エンジンは評価を引き継がず、これまでの蓄積を失います。 対応するページが本当に無い場合のみトップに送り、 それ以外は内容の近いページに個別に転送してください。
5つめの監視は最低1か月続けてください。 転送の漏れは、実際にアクセスがあって初めて分かります。 移転直後は問題なく見えても、 数週間後に「特定のページ群だけ404になっている」と判明することがあります。
よくある質問
移転中にサイトが止まりますか?
手順を守れば、ほぼ止めずに移行できます。新しいサーバーに複製を作って動作確認し、最後にドメインの向き先を切り替える、という順番です。切り替えは世界中に反映されるまで数時間から48時間かかるため、その間は新旧どちらかが表示される状態になります。
移転すると検索順位は下がりますか?
URLが変わらなければ、通常は影響しません。影響が出るのは、URL構造が変わるのに転送設定をしていない場合や、移転後にサイトが長時間表示できなくなった場合です。正しく行えば順位は維持されます。
古いCMSから新しいCMSへの移行は自動でできますか?
記事データの移行は自動化できることが多いですが、デザインとレイアウトは作り直しになります。また独自に作り込んだ機能は、移行先で同じものを作る必要があります。「データは移せるが、見た目と機能は作り直し」と考えてください。
移転の費用はどれくらいですか?
同じCMSでサーバーだけ移す場合は5万〜30万円程度、CMSそのものを変える場合は実質的な作り直しになるため、新規制作と同等の費用がかかります。ページ数と機能の多さで大きく変わります。
掲載している金額は、一般的な発注で見かける水準をもとにした目安です。 実際の費用は要件・地域・体制によって変わります。必ず複数社から見積もりを取り、 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比べたうえでご判断ください。