事業用賃貸借契約の注意点|普通借家と定期借家
定期借家は更新がありません。契約の種類を最初に確認してください。
事業用の賃貸借契約は、住居用より借主の保護が弱く、 契約書に書かれたことがそのまま適用されます。 署名する前に確認すべき点を整理します。
契約の種類
| 普通借家契約 | 定期借家契約 | |
|---|---|---|
| 更新 | 原則として更新される | 更新なし。期間満了で終了 |
| 貸主からの終了 | 正当事由が必要 | 期間満了で当然に終了 |
| 再契約 | — | 貸主が応じれば可能(保証はない) |
| 賃料の減額請求 | できる | 特約で排除できる |
| 中途解約 | 特約による | 特約による |
| 賃料水準 | 相場 | やや低いことがある |
定期借家は期間満了で確実に終わります。
再契約できるかは貸主の判断で、
断られれば移転せざるを得ません。
内装に数千万円かけた店舗やオフィスで、
3年の定期借家だと投資を回収しきれないことがあります。
契約書の冒頭で「定期建物賃貸借契約」となっていないか、
最初に確認してください。
確認すべき条項
| 条項 | 見るポイント |
|---|---|
| 契約期間 | 何年か。定期借家か普通借家か |
| 中途解約 | できるか。予告期間(3〜6か月前が多い)。違約金の有無 |
| 賃料改定 | 何年ごとに見直すか。上げ幅の上限があるか |
| 原状回復 | どの状態に戻すか。業者は指定か |
| 造作の扱い | 設置した内装を残せるか。買取請求権の放棄条項があるか |
| 用途制限 | 事務所限定か。業種の変更や第三者への転貸は可能か |
| 使用時間 | 24時間使えるか。休日の空調は別料金か |
| 連帯保証 | 個人保証なら極度額の記載があるか |
| 保証金の返還 | いつ返るか。償却(返さない分)はあるか |
保証金12か月のうち、2か月分は退去時に返さないという
「償却」の定めがあることがあります。
敷引き(しきびき)とも呼ばれます。
月額50万円の物件なら100万円。
契約書の「保証金」の項に償却の記載がないか確認してください。
交渉で減らせることもあります。
中途解約ができない場合のリスク
中途解約の条項がない5年契約で、2年で撤退することになった場合、 残り3年分の賃料を請求される可能性があります。 月50万円なら1,800万円です。
- 中途解約の条項を入れてもらう:6か月前予告など
- 違約金の上限を決めておく:残賃料の全額ではなく、3〜6か月分にする
- 契約期間を短くする:5年を3年にする
- 転貸を可能にしておく:撤退時に第三者へ引き継げる
署名前にすること
- 重要事項説明を受ける:宅地建物取引士が書面(電子可)で説明する義務がある
- 契約書を持ち帰る:その場で署名せず、社内で確認する時間を取る
- 原状回復の範囲を写真で確認する:入居時の状態を記録し、貸主と共有する
- 設備の状態を確認する:空調・給排水の故障時に誰が負担するか
- 不明点を書面で質問する:口頭の回答は残らない
よくある質問
普通借家と定期借家の違いは何ですか?
<strong>普通借家</strong>は期間が来ても原則として更新され、貸主から断るには正当事由が必要です。<strong>定期借家</strong>は期間の満了で契約が終了し、更新はありません。再契約できるかは貸主次第なので、長く使う前提なら普通借家のほうが安全です。
途中で解約できますか?
契約によります。<strong>中途解約の条項がなければ、原則として解約できません</strong>。期間内の賃料を全額支払う義務が残ることもあります。「6か月前の予告で解約できる」といった条項が入っているかを必ず確認してください。
賃料を下げてもらえますか?
契約中の減額請求は、借地借家法にもとづき「経済事情の変動」などを理由に可能とされています。ただし<strong>定期借家で「賃料改定をしない」特約</strong>がある場合は、その特約が優先されることがあります。
個人保証を求められました。
事業用では代表者の連帯保証を求められることが一般的です。2020年の民法改正により、<strong>個人が保証人になる場合は極度額(上限)の明示が必要</strong>になりました。極度額の記載がない個人保証は無効です。
まとめ
- まず普通借家か定期借家かを確認する。定期借家は更新がない。
- 中途解約の条項がなければ、残期間の賃料を負う可能性がある。
- 保証金の償却と原状回復の範囲は、契約前にしか交渉できない。
- 個人保証は極度額の記載がなければ無効(2020年民法改正)。
※ 契約の判断は個別の事情によります。重要な契約では弁護士にご確認ください。
原状回復の費用は 原状回復の費用相場 にまとめています。
掲載している金額は、一般的な発注で見かける水準をもとにした目安です。 実際の費用は要件・地域・体制によって変わります。必ず複数社から見積もりを取り、 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比べたうえでご判断ください。