M&Aで起きているトラブル|中小企業庁の注意喚起から
譲渡した後に起きる問題は、契約書を交わす前にしか防げません。
中小企業庁は令和6年5月に、 「昨今の中小M&A市場における動向を踏まえた周知・注意喚起について」を公表しました。 M&A専門業者による過剰な営業行為や、 不適切な買い手による M&A への支援が疑われる事象が見られる、というものです。
ここでは公表資料に挙げられた内容を整理し、 契約を交わす前に打てる手をまとめます。
公表されている事例
| 事例 | 内容 |
|---|---|
| 不誠実な対応 | サービスの履行が不十分、契約で定められた条件や約束を守らない |
| 手数料の説明不足 | 成功報酬は売却代金の5%と聞いていたが、最低報酬金額が適用され想定より高くなった |
| 譲渡金額の根拠が不明 | 株式の譲渡金額の評価手法や前提条件について事前説明がなかった |
| DDが不十分 | 仲介者自身がデューデリジェンスを実施。弁護士・会計士の意見を求められることを知らされなかった |
※ 出典:中小企業庁 M&A支援機関登録制度事務局 「M&Aでのトラブルについて、お知らせください」に記載の事例。
不適切な譲り受け側についての注意喚起
譲り渡し側の経営者保証を引き受けることなく、
譲り渡し側の現預金等の資産を移行し、
譲り渡し側の支払いに問題を生じさせ、
倒産に至らせるという行為を複数回にわたって実施した
譲り受け側の存在が、一部報道で指摘されています。
経営者保証の引受けを前提に、低額の譲渡額での譲り受けを提示されている場合は
特に注意し、仲介者・FAへの相談に加えて、
士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センターへの
セカンド・オピニオンを検討するよう案内されています。
契約前に確認すること
| 確認すること | 防げるトラブル |
|---|---|
| 最低手数料はいくらか | 「5%」の説明と請求額の食い違い |
| 報酬基準額は何か | 負債を含めるかで報酬が数倍変わる |
| 成約しなかった場合の総額 | 着手金・中間金が戻らない |
| 譲渡金額の算定手法と前提 | 根拠不明のまま価格が決まる |
| DDは誰が実施するか | 仲介者自身による調査で見落としが出る |
| 専門家の意見を求められるか | 弁護士・会計士に相談できることを知らないまま進む |
| 買い手の資金の出どころ | 資産を抜かれる形の譲渡 |
| 経営者保証の解除時期と方法 | 譲渡後も保証が残る |
譲渡代金と保証の受け取り方
| 論点 | 望ましい形 |
|---|---|
| 代金の支払い | クロージング時に一括。分割なら担保・期限の利益喪失条項を置く |
| 経営者保証 | 解除の時期・方法を最終契約に明記。金融機関の同意を先に取る |
| 役員退職金 | 支給の時期と原資を契約に書く |
| 従業員の雇用条件 | 維持する期間と範囲を条項にする |
| 表明保証 | 範囲と補償の上限・期間を確認する |
※ 「譲渡代金の分割払い」は、支払いが止まったときに回収が難しくなります。 分割にせざるを得ない場合は、担保と期限の利益喪失条項を必ず入れてください。
相談できる窓口
登録されたFA・仲介業者による中小M&A支援に関して、
不適切な支援が行われた場合の情報を受け付けています。
受付フォーム:
https://ma-shienkikan.go.jp/inappropriate-cases
登録M&A支援機関は、この窓口に相談等をしたことのみをもって
秘密保持義務違反として不利益な取扱いを行わないことを、登録時に誓約しています。
ただし、この窓口は紛争解決や助言を目的とするものではありません。
個別の紛争については弁護士に、
事業承継全般の相談は各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターに相談してください。
※ 出典:中小企業庁 財務課/M&A支援機関登録制度事務局 「昨今の中小M&A市場における動向を踏まえた周知・注意喚起について」(令和6年5月)
よくある質問
M&Aでどんなトラブルが報告されていますか?
中小企業庁は、手数料の説明不足、譲渡金額の根拠の未説明、デューデリジェンスが不十分だった事例、支援機関の不誠実な対応を典型例として挙げています。また、契約する意思がないと伝えたのに営業が続く、成立の可能性や条件について誤解を生じさせる広告・営業も問題として指摘されています。
「成功報酬5%」と聞いていたのに高くなることがありますか?
あります。中小企業庁が挙げている事例そのものです。「売却代金の5%」と聞いていたが、最低報酬金額が適用され、想定より高い手数料を払うことになったというケースです。契約前に、料率だけでなく報酬基準額と最低手数料を金額で確認してください。
買い手が信用できるかはどう確かめますか?
譲渡側の経営者保証を引き受けないまま、譲渡側の現預金等の資産を移し、支払いに問題を生じさせて倒産に至らせるという行為を繰り返した譲り受け側の存在が指摘されています。中小企業庁は、経営者保証の引受けを前提に低額の譲渡額を提示されている場合は特に注意するよう呼びかけています。仲介者・FAへの相談に加えて、士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センターへのセカンド・オピニオンを検討してください。
納得できないことがあった場合、どこに相談できますか?
M&A支援機関登録制度事務局の「情報提供受付窓口」があります。登録支援機関によるM&A支援について、不適切な支援が行われた場合の情報を受け付けています。登録支援機関は、この窓口に相談したことのみをもって秘密保持義務違反として不利益な取扱いを行わないことを登録時に誓約しています。ただし紛争解決や助言を目的とする窓口ではありません。
掲載している金額は、一般的な発注で見かける水準をもとにした目安です。 実際の費用は要件・地域・体制によって変わります。必ず複数社から見積もりを取り、 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比べたうえでご判断ください。