オフショア開発の費用と、失敗しない進め方
単価は半分でも総額が下がるとは限りません。差が出るのは仕様の伝え方です。
オフショア開発は「安く作る手段」として語られがちですが、 実際にはまとまった量の開発を、決まった仕様で回す仕組みです。 この前提が合っていないと、安くならないどころか高くつきます。
国別の人月単価
| 地域 | 人月単価の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| ベトナム | 30万〜60万円 | 日本向け案件の経験が多い。技術者数も豊富 |
| フィリピン | 30万〜55万円 | 英語が強い。英語で仕様を書ける組織向き |
| インド | 35万〜80万円 | 大規模・先端領域に強い。時差が大きい |
| バングラデシュ・ミャンマー | 25万〜45万円 | 単価は最も低い。体制の見極めが重要 |
| 中国 | 40万〜80万円 | 単価は上昇傾向。日本語人材は多い |
| (参考)国内 | 70万〜110万円 | 中堅エンジニア |
※ 税別・2026年8月時点の目安。為替と人材需給で変動します。
単価が半分でも総額が半分にならない理由
| 上乗せされるもの | 目安 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| ブリッジSE | 全体の 10〜20% | 日本語の要件を現地の指示に翻訳する |
| 仕様書の作成 | 国内の 1.5〜2倍 | 暗黙の了解が通じないため、細かく書く必要がある |
| レビュー・手戻り | 5〜15% | 認識のズレを早期に見つける |
| コミュニケーション | 定例の増加 | 週1では足りず、日次の確認が要ることも |
結果として、総額の削減幅は 2〜3割が現実的なところです。 「半額になる」という前提で予算を組むと、途中で苦しくなります。
向いている:画面数の多い業務システム、既存システムの移植、
テストコードの整備、決まったパターンの繰り返し開発
向かない:要件が固まっていない新規事業、
業務知識が前提の設計、頻繁に仕様が変わる開発、小規模(1〜2人月)の案件
失敗の典型パターン
| 起きること | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| できあがったものが想定と違う | 仕様書に書かれていない部分を独自解釈した | 画面の全項目・エラー時の挙動まで書く。曖昧な箇所は「要確認」と明示する |
| 手戻りが多く納期が延びる | 完成してから確認している | 2週間ごとに動くものを見る。早期に方向を正す |
| 質問が上がってこない | 「聞くと評価が下がる」と受け取られている | 質問を歓迎する姿勢を明示し、質問一覧を共有する |
| 担当者が頻繁に替わる | 現地の離職率が高い | ドキュメントを残す契約にする。属人化を避ける |
| 結局、国内で作り直す | 要件が固まらないまま発注した | 要件定義は国内で行い、実装以降を委託する |
国内の開発では、書かれていない部分を経験と常識で補ってくれることがあります。 オフショアではそれを期待できません。むしろ書いていないことは作られないと 考えるほうが健全です。これは相手の能力の問題ではなく、 前提知識と業務文脈を共有していないからです。
進め方の型
- 要件定義は国内で行う:業務の整理と決定は、業務を知っている側でしかできません。
- 基本設計まで日本語で固める:画面・データ・処理の流れを確定させます。
- ブリッジSEと詳細を詰める:ここで曖昧さを潰します。面談は必須です。
- 2週間単位で動くものを確認する:完成後の一括確認は避けます。
- 受入テストは自社で行う:業務が回るかを判断できるのは発注側だけです。
契約と体制で確認すること
- 契約形態:ラボ型(月単位でチームを確保)か、請負か。 仕様変更が多いならラボ型が向きます(請負と準委任の違い)
- ソースコードの権利:どの時点で誰に帰属するか
- ドキュメントの言語:日本語で残るか、英語か
- 祝日と稼働日:現地の長期休暇(旧正月など)を工程に織り込む
- 情報の扱い:本番データを渡すのか、マスキングするのか
よくある質問
オフショア開発はどれくらい安くなりますか?
人月単価だけを見れば国内の 3〜6割です(ベトナムで 30万〜60万円、国内の中堅エンジニアが 70万〜110万円)。ただしブリッジSE・仕様書作成・レビューの工数が上乗せされるため、総額では <strong>2〜3割減</strong>に落ち着くことが多いです。
どんな案件が向いていますか?
仕様が明確で、量がまとまっている開発です。画面数が多い業務システム、テストの自動化、既存機能の移植などが該当します。逆に、要件が固まっていない新規事業や、業務知識が前提の設計は向きません。
品質は大丈夫ですか?
「指示どおりに作る」品質は高いことが多いです。問題が起きるのは、指示が曖昧なときに<strong>確認せず解釈して作る</strong>場面です。仕様書の粒度と、質問しやすい関係づくりが品質を決めます。
日本語は通じますか?
ブリッジSE(日本語で要件を受け、現地語で指示する役割)が入るのが一般的です。この人の力量がプロジェクトの成否をほぼ決めます。契約前に必ず面談し、業務知識をどこまで理解できるかを確認してください。
まとめ
- 単価は国内の 3〜6割だが、総額の削減幅は 2〜3割が現実的。
- 向くのは「仕様が明確で量がまとまった開発」。要件が固まっていない案件には向かない。
- 書いていないことは作られない前提で、仕様書の粒度を上げる。
- ブリッジSEの力量が成否を決める。契約前に必ず面談する。
掲載している金額は、一般的な発注で見かける水準をもとにした目安です。 実際の費用は要件・地域・体制によって変わります。必ず複数社から見積もりを取り、 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比べたうえでご判断ください。