EC-CUBE・Welcart で作るECサイト|費用と選び方
ASPでは無理な要件を実現できる代わりに、保守は自分たちの責任になります。
ECサイトの作り方は、大きく「ASP を借りる」「パッケージを自社サーバーに置く」 「フルスクラッチで作る」の3つに分かれます。 この記事は真ん中のパッケージ・CMS 型、 とくに国内でよく使われる EC-CUBE と Welcart を扱います。
ASP と比べて何ができるのか、いくらかかるのか、そして 引き受ける責任が何かを、発注前に把握しておいてください。
選択肢の位置づけ
| EC-CUBE | Welcart | ASP(Shopify 等) | |
|---|---|---|---|
| 形 | EC専用パッケージ | WordPress プラグイン | クラウドサービス |
| 初期費用の目安 | 150万〜600万円 | 60万〜250万円 | 30万〜150万円 |
| 月額 | サーバー+保守 4万〜25万円 | サーバー+保守 2万〜15万円 | 利用料+手数料 |
| カスタマイズ | 広い(コードを持てる) | 中(WordPress の作法内) | 限定的 |
| 脆弱性対応 | 自社(委託先)の責任 | 自社(委託先)の責任 | サービス提供者 |
| 向いているケース | 業務要件が独自・基幹連携あり | コンテンツ主体・商品数が少ない | 標準的な通販を早く始めたい |
※ 税別・2026年8月時点の目安です。要件によって上下します。
EC-CUBE を選ぶケース
EC-CUBE は受注・会員・在庫といった通販の業務機能を最初から持っています。 管理画面も「EC の管理画面」として設計されているため、 日々の受注処理を回す前提の事業に向いています。
| 要件 | 追加費用の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| デザインの作り込み(独自テンプレート) | 60万〜250万円 | ページ数と作り込みの度合いによる |
| 基幹システム・在庫との連携 | 80万〜400万円 | 連携方式(API / CSV / DB直)で大きく変わる |
| BtoB(取引先別価格・掛売り・与信) | 100万〜400万円 | BtoB 向けプラグインを土台にすると圧縮できる |
| 定期購入・頒布会 | 60万〜250万円 | 解約・スキップの運用まで設計する |
| 実店舗との在庫・ポイント連携 | 100万〜500万円 | 同期の頻度と粒度を先に決める |
| 他システムからのデータ移行 | 30万〜150万円 | 会員のパスワードは移行できないことが多い |
EC-CUBE には公式のプラグインストアがあり、決済・配送・帳票などは既製品で足りることがあります。 「作る」前に「買う」で足りないかを必ず確認してください。 数十万円の開発が、数万円のプラグインで済むことは珍しくありません。 ただしプラグインは対応バージョンが決まっているため、本体を上げるときに使えなくなる点は要注意です。
Welcart を選ぶケース
Welcart は WordPress のプラグインとして動きます。 つまりサイトの延長線上にショップがある形です。 記事・ブランドストーリー・実績紹介などのコンテンツが集客の中心で、 商品はその流れで買ってもらう、という事業に向いています。
- 商品数が数十〜数百点まで:数千点を超えると管理が重くなります。
- WordPress の運用体制がある:記事更新をすでに自社でしているなら学習コストが低い。
- デザインの自由度が高い:テーマとして作れるため、ブランドサイトと一体で設計できます。
- 業務機能は控えめ:複雑な受注フローや在庫連携は無理をせず、別の選択肢を検討します。
費用は 60万〜250万円が中心帯です。WordPress のテーマ制作費が大半を占め、 カート部分の設定は相対的に小さくなります。
自社サーバーで動かすということは、脆弱性対応・PHP バージョンの追従・バックアップ・ 改ざん検知をすべて自分たちで(あるいは委託先と)背負うということです。 クレジットカード情報を直接保持しない構成(決済代行のトークン方式)にするのが前提ですが、 それでもサイトが改ざんされれば入力内容は抜かれます。 保守を含めた総額で検討してください。
ランニングコスト
| 項目 | 月額の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| サーバー | 1万〜10万円 | 共用では厳しい。VPS 以上を推奨 |
| 保守(更新・監視・バックアップ) | 3万〜15万円 | 本体とプラグインの更新、脆弱性の追従 |
| 決済代行の手数料 | 売上の 3〜4% | ASP と同様にかかる |
| 改修・運用サポート | 3万〜20万円 | 月あたりの作業時間で契約することが多い |
加えて、数年に一度のバージョンアップ費用を積んでおいてください。 メジャーバージョンをまたぐ場合、構築費の 50〜100% がかかります。 「作って終わり」の予算だと、3年後に動けなくなります。
発注前に決めておくこと
- 受注後の業務フロー:誰が出荷し、誰が問い合わせに答えるか。ここが未定だと後から追加開発が続きます。
- 連携先システムの仕様:基幹側が API を持つのか、CSV なのかで見積もりが数倍変わります。
- 商品データの持ち方:バリエーション(色・サイズ)の組み合わせ数は初期に確定させます。
- 保守の担当:構築した会社が続けて見るのか、別会社に引き継ぐのか。引き継ぐならコードとドキュメントの引き渡し条件を契約に入れます。
- バージョンアップの方針:何年使う想定か。長く使うほど、カスタマイズは薄いほうが有利です。
よくある質問
EC-CUBE と Welcart はどう違いますか?
EC-CUBE は EC 専用のパッケージで、受注管理・会員管理・在庫といった通販の業務機能が最初から揃っています。Welcart は WordPress のプラグインで、サイト(記事や会社案内)の延長にショップを足す形です。「業務システムとしてのEC」なら EC-CUBE、「コンテンツが主役で商品も売る」なら Welcart が向いています。
ASP(Shopify など)ではなくパッケージを選ぶ理由は何ですか?
独自の受注フロー、基幹システムとの連携、取引先ごとの価格出し分けなど、サービス側の仕様に業務を合わせられない場合です。また、データを自社サーバーに置ける点や、月額の従量課金が無い点も理由になります。逆に標準機能で足りるなら ASP のほうが総額は安く済みます。
EC-CUBE のバージョンアップはどれくらい大変ですか?
メジャーバージョン間(例: 2系から4系)は、カスタマイズやプラグインを作り直すことが多く、実質的に再構築に近い作業になります。費用は元の構築費の 50〜100% を見ておいてください。同一系列内の更新(4.2 → 4.3 など)は数万〜数十万円程度で収まります。
構築後の保守は必要ですか?
必要です。自社サーバーで動かす以上、脆弱性対応・PHP バージョンの追従・バックアップはすべて自分たちの責任になります。決済情報を扱うため、放置したまま運用するのはリスクが高すぎます。月 3万〜15万円の保守を前提に予算を組んでください。
まとめ
- EC-CUBE は業務システムとしてのEC、Welcart はコンテンツ主体のショップ。
- 初期費用は EC-CUBE 150万〜600万円、Welcart 60万〜250万円が中心帯。
- ASP と違い、脆弱性対応とバージョンアップは自分たちの責任になる。
- 作る前に、公式プラグインで足りないかを必ず確認する。
掲載している金額は、一般的な発注で見かける水準をもとにした目安です。 実際の費用は要件・地域・体制によって変わります。必ず複数社から見積もりを取り、 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比べたうえでご判断ください。