業務委託契約のチェックポイント6つ
著作権・検収・瑕疵対応など、後で揉めやすい条項を先に潰しておきましょう。
ホームページ制作は、契約書を交わさないまま進んでしまうことが少なくありません。 問題が起きなければそれで済みますが、いざ揉めたときに拠り所が無くなります。 ここでは、Web 制作の業務委託契約で特に確認すべき6項目を挙げます。
※ 本記事は一般的な実務上の注意点をまとめたものです。個別の契約については弁護士等の専門家にご相談ください。
1. 著作権の帰属
最も見落とされ、最も影響が大きい項目です。 取り決めが無ければ著作権は制作会社に残ります。 この状態だと、次のようなときに困ります。
- 別の制作会社にリニューアルを頼みたいが、既存のデザインを流用できない
- サイトの画像やイラストを、パンフレットや広告に転用できない
- 制作会社が廃業し、連絡が取れなくなった
| 定め方 | 内容 | 発注側にとって |
|---|---|---|
| 著作権を譲渡 | 検収・支払い完了時に発注側へ移転 | 最も安全。著作者人格権の不行使も併せて定める |
| 利用許諾 | 著作権は制作会社に残し、発注側は使用できる | 許諾の範囲(改変可否、二次利用、期間)を確認する |
| 定めなし | — | 避けるべき |
制作会社側は「制作実績としてサイトを公開したい」「共通で使っている部品は他案件でも使いたい」という事情を持っています。 そこで、成果物の著作権は発注側に譲渡するが、制作実績としての公開は認める、 汎用的なプログラム部品は制作会社に残すといった形が実務ではよく取られます。
2. 検収の条件と期間
「いつ完成とみなすか」を決める条項です。ここが曖昧だと、いつまでも支払いが確定せず、 逆に発注側が確認しないまま自動的に検収完了となることもあります。
- 検収の基準:何をもって完成とするか(RFP や仕様書との一致など)
- 検収期間:納品から何営業日以内に確認するか(10〜14営業日が一般的)
- みなし検収:期間内に連絡が無ければ検収完了とみなす条項。期間が短すぎないか確認
3. 契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)
公開後に不具合が見つかったときの扱いです。 「検収後◯か月以内に発見された不具合は無償で修正する」と定めるのが一般的で、期間は3か月〜1年が目安です。
フォームからメールが届かないのは不具合ですが、 「やっぱり項目を増やしたい」は仕様変更で有償です。 ここで揉めやすいので、契約書か仕様書に何が正常な動作かを書いておくと判断できます。
4. 修正回数と追加費用の条件
「デザイン修正は2回まで」のように、無償で対応する回数を明記します。 回数の定めが無い契約は、一見発注側に有利ですが、 制作会社はその分を見積もりに乗せているか、途中で「これ以上は有償です」と言い出すことになります。
- デザイン案の提示回数と、修正の無償回数
- 実装後の修正の扱い
- 追加作業が発生する場合の単価(時間単価か作業単価か)
- 公開後、何日以内の修正まで無償か
5. 再委託の可否
制作会社が外部のデザイナーやコーディング会社に一部を任せることは一般的です。 問題は、それが事前に共有されるかどうかです。
- 再委託を認めるか、認める場合は事前通知を求めるか
- 再委託先にも同等の秘密保持義務を負わせること
- 再委託先の行為についても、契約相手が責任を負うこと
自社の顧客情報や未公開の商品情報を扱う案件では、特に確認しておきたい項目です。
6. 秘密保持と個人情報の扱い
問い合わせフォームを作る以上、制作会社は個人情報に触れる可能性があります。
- 秘密情報の定義と、契約終了後も義務が続く期間
- テストデータに実際の顧客情報を使わないこと
- 作業に使う環境(クラウド、外部サービス)の取り決め
- 契約終了時のデータの返却または削除
あわせて確認したい項目
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 支払条件 | 着手金と残金の比率、支払期日。全額前払いは避ける |
| 中途解約 | 解約できる条件と、その時点までの費用の精算方法 |
| 納品物の範囲 | ソースコード、デザインの元データ、サーバーやCMSの管理情報が含まれるか |
| ドメイン・サーバーの名義 | 自社名義になっているか。制作会社名義だと移管でつまずく |
| 損害賠償の上限 | 「委託料を上限とする」と定められていることが多い |
| 準拠法・管轄裁判所 | 遠方の裁判所が指定されていないか |
デザインの元データ(Figma / Photoshop / Illustrator)が納品されないと、 次に別の会社へ頼むときにゼロから作り直しになります。 「納品物:公開用ファイル一式、デザインの元データ、CMS の管理情報」と明記してください。
契約書が無い場合
小規模な案件では契約書を交わさないこともあります。その場合でも、 次の内容をメールで残しておくだけで、後の食い違いをかなり防げます。
- 作業範囲(含むもの・含まないもの)
- 金額と支払時期
- 納期
- 修正の無償回数
- 著作権の扱い
- 納品物に何が含まれるか
発注書を交わす場合の書き方は発注書・注文書の書き方を参照してください。
よくある質問
制作したホームページの著作権は誰のものですか?
契約で定めなければ、原則として制作した側(制作会社)に帰属します。発注して代金を払えば自動的に自社のものになる、というものではありません。将来ほかの会社に改修を頼む可能性があるなら、著作権の譲渡または広い利用許諾を契約書に明記してください。
契約書は制作会社の雛形をそのまま使ってよいですか?
出発点としては構いませんが、そのまま押印する前に本記事の6項目は確認してください。制作会社の雛形は当然ながら制作会社に有利に書かれています。不利な条項があれば、修正を申し入れて構いません。
公開後に不具合が見つかったら無償で直してもらえますか?
契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)の条項によります。「検収後◯か月以内に発見された不具合は無償で修正する」と書かれているのが一般的で、期間は3か月〜1年が多いです。期間の定めが無い契約は要注意です。
制作が途中で止まったらどうなりますか?
中途解約の条項を確認してください。「着手済みの工程までの費用を精算する」と定めておけば、双方にとって公平です。全額前払いで解約条項が無い契約は避けるべきです。
まとめ
- 著作権は定めなければ制作会社に残る。譲渡か広い利用許諾を明記する。
- 検収の基準・期間、契約不適合責任の期間を確認する。
- 修正の無償回数と、追加作業の単価を決めておく。
- 納品物にデザインの元データと管理情報を含める。
掲載している金額は、一般的な発注で見かける水準をもとにした目安です。 実際の費用は要件・地域・体制によって変わります。必ず複数社から見積もりを取り、 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比べたうえでご判断ください。