卸売の掛け率と仕入れ値|建値・リベートの仕組み
「8掛け」の8割は、何に対する8割なのかを押さえるところからです。
卸から仕入れるときの価格は、掛け率で示されるのが基本です。 ただし提示された掛け率だけを見て安い高いを判断すると、実態を外します。 リベート、物流費の負担、支払条件を 含めた実質原価で比べてください。
掛け率の目安
同じ「卸」でも、扱う商材によって水準がまったく違います。 値入れの慣行と、在庫リスクを誰が負うかで決まります。
| 商材 | 掛け率の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 食品(加工食品・飲料) | 7〜8掛け | 回転が速く、粗利率は低い |
| 日用品・雑貨 | 6〜7掛け | 定番品と季節品で条件が変わる |
| アパレル | 5〜6掛け | 返品・消化仕入れの有無で大きく動く |
| 医薬品・化粧品 | 7〜8掛け | 価格が管理されており振れ幅は小さい |
| 機械・工具 | 6〜8掛け | メーカーの代理店区分で決まる |
| 建材・住宅設備 | 5〜7掛け | 定価が高めに設定され、実勢との差が大きい |
※ 目安であって定価ではありません。取引量、支払条件、地域によって上下します。 建材・住宅設備は定価そのものが実勢価格と離れているため、掛け率での比較が特に効きません。
建値とオープン価格
掛け率は「何かの価格の何%」という形なので、 基準になる価格が決まっていないと成り立ちません。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 上代(じょうだい) | 消費者に売る価格。定価・希望小売価格 |
| 下代(げだい) | 仕入れ値。上代 × 掛け率 |
| 建値(たてね) | 取引の基準となる価格。ここから割引や割増を計算する |
| オープン価格 | メーカーが上代を示さない方式。掛け率が使えず、実売価格から逆算する |
上代が無いので「何掛け」では話が通じません。 単品ごとの下代(仕入れ単価)をそのまま出してもらい、金額で比べます。 このとき、送料・センターフィー・決済手数料が含まれるかを揃えないと 比較になりません。「どこまで含んだ単価か」を先に決めてください。
実質原価で比べる
提示された掛け率が同じでも、次の条件で実質原価は変わります。 相見積もりを取るときは、この5つを揃えて聞いてください。
| 条件 | 原価への影響 |
|---|---|
| リベート(年間・新商品・売り場協力) | あとから戻る。実質原価を下げる |
| 送料の負担(着払い/元払い/〇円以上無料) | 小口発注が多いほど効く |
| 最低発注金額 | 下回ると送料が乗り、実質原価が上がる |
| 支払サイト(翌月末/翌々月末) | 長いほど資金繰りは楽。単価は上がりやすい |
| 返品・不良品の扱い | 買い切りか、返品可かで在庫リスクが変わる |
掛け率を下げたいとき
値下げ交渉として持ちかけるより、 卸側のコストが下がる提案として出すほうが通ります。
| 提案 | 卸側で下がるコスト |
|---|---|
| 年間の見込み数量を示す | 仕入れ計画が立ち、在庫の回転が読める |
| 発注をまとめる(週2回→週1回) | 配送回数とピッキングの手間 |
| 納品先を1か所にする | 配送コスト |
| 支払サイトを短くする | 資金負担と与信リスク |
| 定番品に絞る | 専用在庫を持つ必要がなくなる |
※ 逆に、小ロット・多品種・多頻度・遠方への直送を求めるほど掛け率は上がります。 条件を緩められる部分があるなら、そこを交換材料にするのが早道です。
よくある質問
「8掛け」とはどういう意味ですか?
<strong>定価(上代)の80%で仕入れる</strong>という意味です。定価1,000円の商品なら仕入れ値は800円、粗利は200円になります。7掛けなら700円、6掛けなら600円です。注意したいのは、何に対する掛け率かが業界によって違う点です。上代基準のところもあれば、メーカー希望卸価格を基準にするところもあります。「何に対する8掛けですか」と一度確認してください。
リベートとは何ですか?
仕入れ値とは別に、<strong>あとから戻ってくる金額</strong>です。販売奨励金、報奨金とも呼ばれます。年間の仕入れ額が一定を超えたときや、新商品の導入・売り場の確保に協力したときに支払われます。仕入れ単価だけを比べると高く見えても、リベートを含めた実質原価では逆転することがあるため、条件を書面でもらっておくと比較しやすくなります。
センターフィーは誰が払うのですか?
小売のチェーンが持つ物流センターを通すときに、<strong>納品する側(卸・メーカー)が小売に払う</strong>費用です。納品価格の数%が一般的で、センターまで運べば各店舗への配送は小売側が行うという分担になります。卸から見れば原価に乗る費用なので、掛け率だけを見て安いと判断すると実態を外します。
掛け率は交渉できますか?
できます。ただし動くのは<strong>数量・支払条件・物流条件</strong>で、「安くしてください」だけでは動きません。年間の見込み数量を示す、発注をまとめて回数を減らす、支払サイトを短くする、自社で引き取る(車上渡し)といった条件は卸側のコストを直接下げるため、掛け率に反映されやすくなります。
掲載している金額は、一般的な発注で見かける水準をもとにした目安です。 実際の費用は要件・地域・体制によって変わります。必ず複数社から見積もりを取り、 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比べたうえでご判断ください。